隠庵 ひだ路(岐阜・福地温泉)
岐阜県は福地温泉にある全室露天風呂付の宿。福地温泉自体の持つ良い意味での鄙びた雰囲気に加え、古い日本家屋を移築したこの宿、とにかく静けさと懐かしさを思う存分満喫できます。また、福地温泉自体が近辺に乗鞍や上高地等を抱える自然豊かで風光明媚な場所に位置するため、露天風呂からの景観もなかなか素晴らしいものです。
隠庵 ひだ路
「隠庵 ひだ路」は岐阜県の山奥にあります。白骨温泉や平湯温泉等が近くにあり、乗鞍や上高地といった観光地からも近く、非常に風光明媚な立地であります。
福地温泉自体が、平湯温泉や白骨温泉といった有名温泉地に隣接していながらも、他が有名なせいか非常にこじんまりした穴場的温泉地であり、温泉街自体ものんびりした風景が広がっています。わずか13軒の宿からなるこの温泉は、娯楽などを排してただただ大自然に抱かれながら日常の疲れを癒したい向きにはうってつけの温泉地であります。
その福地温泉の中でも、最も価格的には高い部類に入るこの宿ですが、あくまでもそれは相対的な話であり、部屋露天付きで一泊¥22000程度というのは、全国的に見てもかなりコストパフォーマンスの高い部類に入るのではないでしょうか(あくまでも部屋露天付き等のスペック面だけでの話しですが)。
近年新宿からの直通の高速バスも運行されており(平湯温泉BSまでですが)、アクセスの便はこの立地にしてはかなり良い方だと思います。
宿はと言うと、古民家を移築した建物で、全体的に非常に重厚感があります。ロビーの母屋は、高い天井に太い梁、狸や熊などの剥製・・・まさしく期待していた通りの路線を地で行っており、嫌がおうにも期待が高まります。
前述の通り、全部屋に部屋露天風呂が備わっており、それもあってか基本的に部屋に籠もって過ごすタイプの宿のようです。そのため、パブリック系の設備はほとんどありません。共用露天風呂もあるにはありますが、非常に小さいものです。部屋露天とさして大きさ的に違いはありません。まあ、部屋にあるのにわざわざ共用風呂を使用する人はあまりいないのでしょう・・・。
ロビーには様々な雑誌が置いてあり、それを部屋に持ち込んで読書することも出来ます。
部屋はと言うと、テレビとテーブルのある居間に加えて、掘り炬燵のある部屋の二間続きになっています。その先に見える庭には、部屋付きの露天風呂があります。いかにも後からとってつけました的な簡素なものではなく、きちんとした露天風呂です。
部屋にいても特にやることもありませんので、早速露天風呂に浸かってみました。湯温は比較的低温で、長風呂にはうってつけです。すぐ脇が隣の部屋の露天風呂になっており、木製の柵一枚で隔てられていますが、露天という開放感と植物等がはいされているため、さほど気にはなりません。
景色はというと、この宿自体が平屋で横長の造りのため、部屋によってかなり見え方が異なるとは思いますが、自分が利用した部屋からの眺めに関して言えば、それなりに壮観なものでした。宿のすぐ裏手に川が流れており、その川が宿よりもかなり低い位置を流れており、その対岸は宿よりもさらに地面のレベルが高くなっているため、風呂からの眺望も川の対岸の斜面(と言うほどの高さでもありませんが)とその上に立つ宿が見えるだけで、後はその宿の後ろには壮大な山々が連なっています。対岸の宿がやや気にはなるものの、川を挟んでいるため距離的にかなり離れており、圧迫感はありません。むしろ、そのさらに向こうに見える山々の雄大さに目を奪われ、手間の遮蔽物のことなどすぐに気にならなくなってしまいました。
風呂の周辺にもいちおう低木ながら植栽がされておりますが、対岸の宿からこちらが見えそうな感覚は常にありました。
食事を楽しんだ後は、再び部屋露天に浸かります、ビール片手に・・・。するとしんしんと雪が降ってきました。聞こえてくるのは川のせせらぎと降り積もる雪の音のみ・・・空を見上げると満天の星空。
温泉街自体にも宿にもこれといったものは何もありません。でもその何もないことが最高のシチュエーションなのです。このロケーションと空気、ゆったり流れる時間があればそれだけで十分なのです。にぎやかな温泉地的なものを求めている人にはこの温泉街も宿も向かないでしょう。しかし、ただただのんびりと過ごしたい人には打ってつけのシチュエーションが用意されています。きっと、この温泉地に来る人は、そういった娯楽や人工的・アトラクション的な観光などはなから望んでいないのでしょうし。その意味では、上手くすみわけが出来ているというか、客が宿や場所を選ぶのと同時に、宿や場所も客を選ぶということでしょうか。
このわずかに13軒の宿の温泉地、宿の主たちの団結力もかなりのようで、道路沿いの宿の看板も行灯風に統一したり、各宿の利用者は他の宿の温泉に1回だけ無料で利用出来る相互乗り入れ制度を導入していたり、危機感を持たれて頑張っているなーと感じました。
いずれにせよ、コストパフォーマンスは極めて高い宿であることは間違いありません。今度は季節を変えて、夏や秋にでも是非再訪してみたいと思ったのでした。
こちらが宿前景。周囲を山々に囲まれており、まさに「隠庵」といった感じです
石畳には打ち水かしてあり、庭の手入れも行き届いています
フロントのあるパブリックは純民芸調
獣の剥製がいたるところに・・・奥には本が置いてあり、ちょっとしたライブラリーに
天井には太い梁が張り巡らされており圧巻
お土産コーナー。やはり飛騨といったらさるぼぼでしょうか?
廊下も畳敷きになっています
利用した部屋は白糸草という部屋
中も純和風です。8畳程のメインルームの奥には掘り炬燵のある板の間が続きます
古民家調ながら清潔感もあります
掘り炬燵のある板の間の外には部屋露天が
広さ・湯量ともに申し分ない部屋露天。周囲はやや閉塞感もありますが
露天からの景色も素晴らしいの一言。閉塞感はあるものの、この壮大な景色のお陰でかなり中和されています
露天のすぐ向こうは谷になっており、谷の反対側の宿が見えます。向こうからこちらは見えないのかちょっと気になります
隣との仕切り
アメニティも最低限のものは一通り揃っています
内風呂も勿論あります
内風呂は総檜。非常に良い香りがします
シャンプーまで檜!
トイレもシンプルながら清潔感があります
冷蔵庫にはビールや日本酒などが。品揃え、価格ともに普通でした
中にはオリジナルの日本酒もありました
こちらが共用風呂
共用風呂の内風呂。共用にしては狭いです
共用の露天はもっと狭いです。全室露天付きなので、あまり使う人はいないでしょうが
共用風呂の脱衣スペース
宿の看板も福地温泉全体で統一されています。このあたりからも宿の主達の団結力が伺えます
さて、ひだ路の食事はというと・・・
食事は個室ではなく、こちらの広間で供されます
食前酒。非常に不思議な味のする食前酒でした
豆腐、山芋の梅肉ソース載せ、瓜の煮物、ジュンサイとオクラの酢の物など
豚肉と大根の煮付け。これは酒のアテとして絶品でした。
角煮のような味付けですが、そこまでしつこくもなく上品な味付けでした
野沢菜のおひたし
鱒と鯉の刺身
この辺りの郷土食のころ芋。大学芋のように非常に甘い味付けでした。
香の物
囲炉裏では川魚の焼き物。もう一つはきりたんぽのような食感のものに味噌をつけたお焼き
古代米のあんかけ。これも中々美味しかったです
メインはなんといっても飛騨牛です
目の前で焼かれます
味噌汁はやはり赤味噌。量もたっぷりあります。
デザート
つづいて、朝食はというと・・・
やはり味噌汁はたっぷり。朝食の味噌汁は白味噌でした
朴葉味噌。非常に美味しく、お土産で買って帰りました。
サラダもシンプルな味付けながら、野菜が新鮮でとてもみずみずしかったです
白飯もつやつや
トマトジュース。
大根の煮付け。味がとてもしみています
こちらもいい味付けでした
汲み上げ豆腐
さしみこんにやく。わさび醤油でいただきます
玉子焼きとらっきょう。
香の物は大根ときゅうり。いい味付けでした。
デザートはりんご
地の特産品や郷土料理が供され、非常に良い経験が出来ました。
が、比較的さっぱりした食材が多いので、ボリューム的には個人的にはもう少し
欲しい所ではありました。
あと、せっかく郷土料理や地の食材を使っているんですから、献立があるとさらに楽しく食事がいただけるかもしれません。
隠庵 ひだ路(岐阜・福地温泉))
岐阜県高山市奥飛騨温泉郷福地687
TEL 0578-89-2462
@¥22200~(in 14:30~/out ~11:00)
隠庵 ひだ路 http://www.kakurean.com/