小坪海岸 凛花(神奈川・逗子)


 神奈川県逗子にある全4室の民宿旅館。元々は民宿久平旅館という釣宿民宿だったが、05年3月にパンデミックという店舗設計事務所によってデザイナーズ旅館としてリノベーションされた、若いオーナー夫婦の感性が映える宿。



 場所は、かの有名な逗子マリーナの至近という好立地。部屋からは海は本当にちょっとしか見えないものの、潮風や海鳥の鳴声、マリーナの椰子の木などから、海を非常に近くに感じることが出来ます。

 元々逗子マリーナ自体埋め立て地に新たに建てられた施設であり、それ以前はこの凛花の目の前までが海だったのです。それゆえの、凛花がある路地周辺の昔ながらの街並みと、マリーナの南国情緒漂う街並みとのコントラストが非常にアンバランスで面白いです。


 建物自体は元民宿だっただけあり、非常にこじんまりしています。しかし「狭苦しい」というよりは「コンパクトにまとまっている」という印象を受けました。家具の配置や調光、空間の取り方等が非常に上手で、この限られた敷地面積を最大限に活用しているなーと素人目にも感心しきりでした。

 部屋も全4部屋のうち、離れタイプの部屋以外の3部屋は平米自体はかなり狭いです。しかし、息苦しさを感じるどころか、逆に安心感と居心地の良さを強く感じました。照明の配置(基本的に埋め込み)やインテリアの色使い等、狭さを感じさせない配慮・苦労が随所から伝わってきます。


 料理はというと、元釣宿民宿だっただけあって魚介類の鮮度は抜群です。若い料理長が自ら漁に出て、自分で獲ったものを使っているとのこと。そのため、日によって供される食材も全く異なってくるとのことです。

 料理自体は、非常にオーソドックスかつシンプルなメニューですが、それも食材への自信の裏返しでしょう。シンプルでありながらも箸休めや付け合せの品々など、きちんと仕事をされていると感じました。

 お酒の種類ですが、こちらはワインが非常に充実していました。また、例えば生ビールや焼酎等の価格も、非常に良心的でした。


 なお、お風呂は温泉ではありませんが、こればかりは立地的に仕方がないでしょう。その代わり、館内には貸切風呂が2ヶ所あり、広さ・湯温ともに申し分ありません。夜は23時まで、朝は6時~9時まで利用可能です。




細い路地を上がっていくと凛花があります。


入口には唯一の看板がひっそりと佇みます


すぐ先が逗子マリーナという立地。


お着きのお菓子は自家製シフォンケーキとハーブティー


部屋は広くはないものの、圧迫感や窮屈さは全く感じさせません。


ちょっとしたバルコニーもあります。


部屋の奥が寝室スペースとなっています。


部屋備え付けのオーディオはナカミチ製。


テレビはアクオス。


冷蔵庫内にはミネラルウォーターとスーパードライのミニ缶が(いずれも無料でいただけます)。


DVDプレーヤーも完備。


コーヒーや紅茶なども用意されています。


バルコニーには椅子も用意されています。海からの潮風が心地よいです。


トイレはウォシュレット。


洗面台もシンプルモダンなものを使っています。


大きめのドライヤーやアメニティも完備されています。


女性用のアメニティセットは携帯できて便利。


部屋の鍵は1つ。


貸切風呂は洗い場の大きさも十分。


場所柄温泉ではないものの、湯船の大きさも十分です。外にはちょっとした箱庭が広がります。


脱衣所には水冷機もあります。


ロビーは大きめの窓で開放感十分。狭さを感じさせません。


ソファは宿オリジナルのもの。


一角には書籍やCD等がディスプレイされており、部屋で鑑賞することも出来ます。



続いて、食事はというと・・・


食事は個室でいただきます。


食前酒は日本酒。とてもフルーティーでシャンパンのようでした。


前菜は左から小鯵のマリネ、生しらす(さすが小坪!)、サーモンとピンクグレープフルーツのマリネ。


鎌倉産野菜と蛸のサラダ(バルサミコ系のドレッシングが美味)。


かぼちゃの冷製スープ。


お刺身(左から鯛、鮪、太刀魚)。


横浜豚と大根の煮付け(これは中でも特に美味しかったです)。・・・横浜豚は希少価値が高いらしく、生でも食べれるとのこと。


口直し(ハーブのシャーベット)。


舌平目の焼き物(付け合せも絶品!)。


白飯はゆかりご飯と卵かけご飯から選択可能。こちらのゆかりご飯。ご飯の炊き加減といい甘みといい非常に美味しい白飯でした。


こちらは卵かけご飯。黄身がとてもこんもりしています。


卵かけご飯は、このあおさ醤油をかけていただきます。この醤油は本当に絶品!しょうゆの中に海苔の風味が漂います。山口県の特産らしく、交流のある山口の有名デザイナーズ旅館「てしま旅館」から分けていただいているそうです。


味噌汁。


デザート(チョコレートシフォン)


食後の飲み物はコーヒーと紅茶から選択可能。



続いて、朝食はというと・・・


サラダ


冷奴


ご飯、味噌汁、鯵の開き


塩辛、塩昆布、梅干、卵焼など

 



 従業員の方も、若い経営者夫婦をはじめとして非常に若々しく、なんというかひたむきさと温かさが端々から伝わってきました。良くも悪くもマニュアル的な接客はありませんが、どこか応援したくなるような感じといえば分かってもらえるでしょうか?


 個人的には、ここは旅館ではなく敢えて「民宿」と呼びたいです。旅館の快適性と民宿の温もり・居心地の良さを兼ね備えたこの宿、単なる旅館というカテゴリーでは相応しくないですから。

 デザイナーズ旅館というと、どこか上っ面だけのハード重視ソフト軽視と捉えてしまいがちですが、この宿はそれまで民宿で培ってきたしっかりとした土台をも持ち合わせています。この宿に出会うきっかけはデザイナーズという門戸であったとしても、一度利用すればその奥行きの深さとソフト面での魅力を身をもって実感することが出来ます、きっと。





小坪海岸 凛花(神奈川・逗子)



神奈川県逗子市小坪5-8-3

TEL:0467-25-2340

in 15:00~/out ~10:00

1泊(2名) @17850円~


小坪海岸 凛花 http://www.kotubo-linca.com/