竹ふえ(熊本・南黒川温泉)
熊本県南黒川温泉にある宿。広大な敷地には竹林が広がり、野趣溢れる雰囲気が自慢の宿。宿自体は出来てからまだ比較的日が浅いものの、徹底した雰囲気造りによって懐かしさをいたるところから感じることができる。一方、まだまだ様々な施設を作っており(利用時)、今後もますます眼が離せない宿であります。全室露天風呂付でありながら、比較的安価な価格設定も魅力的。
九州を代表する温泉地の一つである黒川温泉・・・のちょっとはずれにある南黒川温泉。今回のお宿「竹ふえ」はその南黒川温泉にあるお宿。
さて、山道を少し登ると、お目当ての竹ふえが見えてきました。チェックインの15:30よりやや早く到着したためか、駐車場に車を入れるも出迎え等は特にありませんでした。早すぎたかな〜などと思いながらも母屋に入ると、係りの仲居さんがおり、何の問題もなくチェックインさせていただけました。母屋・宿泊棟は全て古民家を移築したとの事で、中々味のある佇まいです。
今回利用した部屋は「水音(もね)」という部屋。隣室との2棟続きになっているようです。玄関を入るとまずは囲炉裏のある部屋があります。こちらで朝夕の食事をいただくとの事です。さらにその奥に居間があります。こちらは12畳の和室で、畳には琉球畳を使用しており、古さの中にもモダンさをも演出しています。
さらに居間から洗面所を抜けると外通路があり、その階下には部屋付の半露天風呂とウッドデッキがあります。部屋風呂は源泉掛流しのためかなり高温ですが、仲居さんに言えばよいとの事。ちなみに、自分は浴槽横の水槽(こちらも天然水掛流し)を用いて温度調整しました。
ウッドデッキですが、こちらには椅子が2脚用意されており、温泉で火照った体を冷ますのに格好の場ではありますが、角度によっては外から丸見え(壁を隔ててすぐ外が共用通路になっている)です・・・。また、宿の名の通り、周りは全て竹林という抜群の立地ではありますが、それ故、蚊との戦いでもあります。
部屋の外には前述の通り竹林が広がっており、その先には小川と小さな滝があります。ロケーションは抜群でした。で、その小川の向こう側も山になっているのですが、川を挟んで向こう側の山からは一転して竹林ではなく杉の木が広がっていることから、そちら側はこの宿の敷地ではないようです。
さて、部屋で暫く休憩した後、この宿の自慢の一つである貸切風呂へと出向くことに。貸切ではありませんが男女別時間入れ替え制(朝夕)の竹林風呂と野天風呂が共用風呂としてあり、更には貸切制(無料)の洞窟風呂があります。洞窟風呂利用者は予め予約を入れておき(30分の時間制)、時間になったらフロントにてしゃもじ型の札を受け取り、それを洞窟風呂入り口に掛けておくという仕組みでした。風呂まで行く途中に天然水でラムネが冷やされた石甕が置いてあります。200円と書いてありますが、宿泊者は無料との事です。
そういえば、九州の温泉はいわゆる外来入浴を受け付けている宿が非常に多く、これらも外来入浴者向けの表記のようです。
また、この宿の売りの一つが「お水」だそうです。自然豊富なこの辺り、非常に良質の湧き水が出るらしく、館内の水周りにはこの湧き水を用いているとの事。洞窟風呂に行く道すがらにも、湧き水が飲める水瓶が設置してありました。
しかし自然豊かな環境にある宿だけあり、とにかく洞窟風呂に行くまでの道のりの険しいこと・・・。滑りやすい石段をいくつも登っては下りを繰り返し、水はけの悪いぬかるみを飛び越え・・・ようやく洞窟風呂にたどり着いたのでした。足の不自由な方やお年寄りには非常に危険な道のりです。
さて、お目当ての貸切洞窟風呂に着いて唖然・・・従業員の女性が掃き掃除をしているのですが、我々が脱衣場に入っても一向に立ち去る気配がありません。目隠しや扉でもあれば良いのですが、そういったものは何もないのです。まあ、宿も従業員さんも大らかっていえばそれまでですが(苦笑)一生懸命掃除されているのを見ると「どいてくれ」ともいえず、掃除が終わるのを暫く待ったのでした(こうしている間にも限られた利用時間は刻々と過ぎていくのであります・・・)。
で、肝心の洞窟風呂はと言うと・・・想像よりもかなり狭く、また、天井も低く閉塞感が凄かったです。そして部屋露天同様、かなりの高温・・・。ひいひい言いながらも何とか入湯。風呂の底では沢蟹が真っ赤に茹で上がって死んでいました。これを野趣溢れるととるか・・・。
部屋にて暫く休んだ後、お待ちかねの夕食の時間です。チェックイン時に食事の希望時間を18:00からお願いしていましたが、18:30になっても人っ子一人現れません。それでも辛抱強く待ちましたが時計は遂には19:00に・・・さすがに空腹に耐え切れずフロントに確認の電話をすると、案の定仲居さんが隣の部屋と食事時間を間違えていたそうで・・・。
食事時になって初めて囲炉裏部屋を利用して気づいたのですが、隣の部屋の会話が筒抜けなんです。居間では全く隣の部屋の物音一つ聞こえなかったんですけど。
一点非常に残念だったのが、焼酎や日本酒等のお酒について、部屋の冷蔵庫から自分で出すセルフサービス方式だった点です。自分は焼酎は水割りが好きなのですが、氷もない、マドラーも無い状況で、自分で冷蔵庫からボトルとグラスを出して、居間からポットのお水を持ってきて注ぐ・・・これはいくらなんでも味気ありません。氷の無い水割りを九州に来てまで飲むハメになるとは・・・。水割りの状態で給仕できないのであれば、せめてマドラーと氷位はあらかじめ部屋に用意しておくべきです。
因みに、この宿の売りの一つとして川床料理が味わえます。京都の鴨川なんかで有名なあれです。敷地内に小川が流れており、その上に川床があり、夏季限定で夕食をそこで食すことが出来るというものです。これもこの宿での楽しみの一つでしたが、当日そのことを聞いたところ、「夏は蚊が多いから秋にならないと使えない」との事。いや、ホームページにも思いっきり「夏季限定」って書いてあるんですけど・・・。
あと、囲炉裏で固形燃料を使わせるというその感覚、僕には全く理解できませんでした。
そういえば、帳場の外にアイスの入った冷凍庫が置いてあり、こちらも全てチェックアウト時の自己申告制となっています。地元小国ジャージーミルクを用いたアイスが4種類程入っていました。
この他にも、フロントの後ろに焼酎の試飲設備があるのですが、その存在に気づいたのがチェックアウトの会計時・・・事前説明位してくれても、と思いました。
基本的にこのお宿は良く言えば非常に大らかでのんびりしています。適度の距離感とでも言いましょうか・・・ただ、説明すべきことはきちんとして欲しかったなーというのが本音でしょうか。宿としての利用者への説明責任が果たされていないと感じた部分があったのも事実。まあ、それでも雰囲気等、非常に居心地の良い宿ではありました。そして、何よりもコストパフォーマンスが非常に高い宿であることは間違いありません。
今回利用した部屋「水音(もね)」
このように離れの建屋が点在しています。
入るとすぐに囲炉裏があります
リビング。落ち着いた和室。
部屋の露天風呂
デッキがあり、眼前の竹林を愛でながら涼をとれます
通路においてあるラムネ。水で冷やしているのがまた味わい深い
宿の名の通り、竹林の中に宿があります
貸し切り露天風呂
料理はというと・・・
まずは熊本と言えばこれ、馬刺しです。
適度に脂がのっていて美味でした。
先付の海老、里芋、薩摩芋、高野豆腐、トマト
珍味「うるか」。鮎のはらわた・卵の塩漬けですね。
塩辛・酒盗・うるか系は酒飲みにはたまらないです。
上にはトマトと胡瓜がのっています。
豆乳豆腐の雲丹・山葵のせ。どちらかと言うと卵豆腐のような食感で美味
鯛の刺身。
焼き物は豊後牛ヒレ肉と破竹、茄子、椎茸。豊後牛はあまり脂がなかったです。
このように囲炉裏の鉄網で焼きます。これも中々楽しいものです
鍋物は鱧と松茸。さっぱりしており、焼き物の後に丁度良いです
茶碗蒸しの鰻白焼きのせ。
上にはクコの実がのっています。九州ではこのクコの実が至る宿で使われていました。
豚肉のしゃぶしゃぶ。程よいサシ具合でとても美味しかったです
鮑と胡瓜、トマトの酢の物。色からも判るようにミントが入っており口の中がさっぱり・・・でも、ちょっと歯磨き粉のような・・・
冷やし汁の味噌汁。その名の通り、冷たいです。九州全体にいえることですが、白味噌ベースの合わせ味噌が甘いこと。関東人の自分にはちょっとしたカルチャーショックでした。
香の物
デザート。西瓜、メロン、梨のムースのせ。ムースはバニラクリームっぽいです
ここの料理は懐石のような一品出しではなく、まとめてドカッと出てくるスタイルです。全体的に中々美味しかったですが、中には数品疑問符が付く様なものもありました。酢の物のような癖の強いものがあることを考えると、恐らく食べる順番なんかも取り合わせとしてかなり重要なのかと思うので、出来れば一品出しにしてほしい所ではあります・・・。
部屋が広い敷地内に点在しているので、オペレーション的に難しのかも知れませんが。
続いて朝食はというと・・・
全体的にはこんな感じです。
鯵の味醂干し、辛子明太子、呉汁、生卵、味海苔、豆腐、お浸し、漬物など
鯵の味醂干しと辛子明太子。
囲炉裏ではなく、固形燃料で焼きます。
急かれているようで、個人的には固形燃料は苦手です。
九州の郷土料理「呉汁」。大豆の磨り潰したもの(これを「呉」という)を汁に入れたものだそうです。おから鍋って感じでした。味は非常に淡白・薄味です。
竹ふえ(熊本・南黒川温泉)
熊本県阿蘇郡南小国町大字満願寺5725番地
Tel:0967-44-0383